国境の町ピシガ・コルチャネス
ひとまずバスを降りてそれぞれ待ち時間の使い方を探ります。
到着した地点は標高4,000メートル超で、とにかく風が冷たく寒いです。
町にはもちろんボリビアーノとペソ・チレーノを換金する両替屋、軽食屋などが立ち並びます。
またこの場所に着いた時点では予想が足りていなかったのですが、国境のシステムの不具合か何かの影響で越境に一晩を要する見込みだったとのこと。
着いてしまった以上選択肢はなかったわけで、このままバスで一晩を過ごすことになりました。
この付近では検問所のない場所を遠回りをして、いわゆる不法入国を斡旋する業者がたくさんいるようです。
筆者にも個人的に2,3人の人から勧められましたが、きっぱり断りました。
後で確認したところ、支払う費用の相場は150Bsとのこと。
後述する通り小さなメリットに対してデメリットが大きすぎるため、もしここに来た人はしっかり断りましょう。
とはいえさすがボリビア、バスに戻ってみれば半分以上の人は荷物をもって不法入国で去って行ったとのこと。
さすがに笑ってしまいましたが、これも現地の闇ビジネスとして社会を回しているのでしょう。
夜になるとさすがに店も営業を終え、食べるものを探すのが難しくなってきました。
動画でフライドチキン屋に入りましたが、既に終了間近の品薄状態、挙句本来15Bsのものを妻に18Bsで提供しようとしていたようです。
後ろに並んでいた恐らく常連客と思われる人の指摘で3Bs助かりました。
さらに驚いたのが公衆トイレの少なさと汚さ。
落書きも相まって最悪のトイレです。
差別する意図は毛頭ありませんが、やはり衛生環境やマナーなどを観察すると低所得者層の多い場所であることを痛感します。
これは仕方のない事実でしょう。
バスへ戻ります。
夜にはかなり気温も下がるため、バスの運転手はできるだけ出入りのためにドアを開けたがりません。
乗客にとってもその方が助かるので、出入りは最小限です。
しかしこの日はまぁ列が進まなかった。
ちなみにスマホのSIMも探せばチリのものを買うことができます。
価格は安いもので1GB用が10Bs。対応範囲の広いENTELのものです。
ひとまずチリに入るための備えとしては十分でしょう。
どうにかこうにか寒さに耐えながら時計一周。翌朝6時頃にようやく検問所に辿り着きました。
距離にしてはわずか数百メートルだったはずですが、長い道のりでした。
すべての持ち物を回収して検問所へ入っていきます。
検問所の中でも感じたのが、やはり手続きの遅さ。
並び始めてから出るまでに合計2時間以上はかかったと思われます。
それだけボリビア⇒チリ越境には不法入国の割合が多く、警戒が強められているということなのでしょう。
出国に際しては、ボリビア永住権をもった外国人には70UFV、この時のレートで176Bsの出国税らしき支払いが求められます。
ちなみにボリビア人には20Bsでした。
必要な書類は特になく、日本人であればパスポートがあれば十分です。
ただし日本人がこの国境を通過することは非常に稀だったようで、チリ側の検閲官が日本人がビザなしで入国できるのか知らず同僚に確認して回っていました。
プロとしてその辺りはちゃんと勉強しておいてほしいものですね。
ということでようやくようやく、長かった国境での時間が終わりに近づきました。
国境に到着してから数えること約14時間、いよいよチリ国内へ向けて出発です。
コルチャネス~イキケ
検問所から出る時にはすっかり朝日が昇っていました。
乾燥した高地らしく、雲一つない快晴です。
バスも検閲を終え、乗車していきます。
当然ながら乗務員も交代した模様。
出発したと思いきや、軍人が乗り込んできて抜き打ち身分証明書チェック。
やはりチリ側の警戒は抜かりないです。
気を取り直して出発。
朝食もろくに手に入れられなかったわけですが、途中バスが路肩に停まりいくらかものを買う時間が与えられました。
チャルケ(干し肉)が3,000ペソ・チレーノス。およそ600円くらいでしょうか。
その後はすっ飛ばしていきます。
チリ国内へ入ってからはさらに荒涼とした砂漠地帯へと入っていきます。
アタカマ砂漠と呼ばれる世界的に有名な砂漠はもうすぐそこです。
さて数十分走ってきたところで、また軍人さんが乗り込んできて身分証明書のチェックが入りました。
これが通常運転なのだとすれば、そうとうボリビアからの入国者を警戒している表れとなります。
さらにバスが停車している傍らでは、まさにトラックの中に4人ほどの若い男性らしき人たちが両手を拘束され座っているのが確認されました。
恐らく国境から業者のあっせんを受けて不法入国を試みた人たちでしょう。
このような厳しい取り締まりと彼らの結果を見ると、決して不法入国なんて試みたくないと感じます。
そもそも日本人が正式な書類なしにチリに入ったところで、やりたいことなんて何もできません。
百害あって一利なしとはまさにこのことです。強いて利があるとすれば、入国の時間が映画数本分ほど節約できることくらいでしょう。
アタカマ砂漠は非常に起伏に富む地形をしており、バスは上ったり下ったりを繰り返しながら徐々に標高を下げながら太平洋沿岸へと近づいていきます。
映像では伝わりきらないほどの雄大さ。
もしここに放り出されたら決して生きては戻れないのではないかと思わされる過酷な環境。
非日常感がただバスに乗っているだけで味わえる路線です。
さて、快適な高速道路であるチリ国道5号線に合流する付近まで到達すれば、もう太平洋はすぐそこ。
同じ南米大陸の中でもボリビアでは見られない光景に驚きを隠せない妻。
延々と人里離れた砂漠地帯を貫いてきたバスは、ついに活気のある都市部へと入っていきます。
イキケの内陸側にある都市、アルト・オスピシオの山側の末端に突入です。
この文明のある安堵感。
そしてついに待ちわびたその時が訪れます。
イキケ市街地の山側、標高の高い位置から突如として太平洋側に視界が開けます。
走りながら景色を眺めているだけで、海と地球の大きさを感じとれそうです。
海のないボリビアで海断食(笑)の日々を送り、長時間バスに揺られ国境で待たされた苦労が報われた気分。
これぞまさに陸路の旅の醍醐味です。
砂の山に作られた緩やかな坂を下ってイキケの中心部へと近づいていきます。
この急な山の斜面と海に挟まれた立地が、雰囲気こそ大きく異なるものの港町神戸を彷彿とさせます。
背後には下ってきた坂とそれを取り囲む砂漠地帯。
知らずに景色を見せられたら「中東のどこかですか?」と尋ねたくなるような、南米でもなかなか見られない砂漠と海のコンビネーションが特徴的な光景です。
市街地へ降りてしまえば、高層マンションの立ち並ぶリゾート感も兼ね備えた港町。
南北に非常に長い国土をもつチリの中でもかなり北に位置するイキケは、比較的温暖な気候を楽しむのに最適なのかもしれません。
バスターミナルはイキケ市街地の中でも最も北の海側に位置しており、ちょうど観光スポットであるエスメラルダ号レプリカの目の前にあります。
ぱっと見ただけでもたくさんのボリビア人、もしくは南米の他の国々から訪れているであろう多様な人々で溢れかえっており、非常に活気を感じました。
到着時刻は昼の12時頃。コチャバンバからのバスの所要時間は国境通過も含めて約27時間でした。
ちなみにこの国際線バスターミナルにATMは見つからなかった模様。
チリペソ現金が必要な場合は、市街地のスーパーや銀行支店などでATMを使って引き出す必要があります。
それにしてもここまでの全行程で1人あたりの交通費がわずか205Bs(約4,000円と少し)。
距離に対して凄まじいコスパだと思いませんか。
これが南米の陸路旅です。
今後も続く
というわけで、南米の旅の最初の部分についてまとめました。
イキケで一息ついたら、筆者たちは一気にチリ中部の首都サンティアゴ、そして南部の美しい街バルディビアへと向かいます。
こちらについてもたっぷりボリューム満点でまとめていくので、ぜひお楽しみにしてください。
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