僕が生まれ育った田舎町は山陰本線の沿線で、物心ついたときから単線を100km/h近くでぶっ飛ばす電車を見るのがずっと好きでした。
出かけていて線路を見かけるたびに、「次は何が通るのかな、はまかぜかな、北近畿かな?」なんていつもワクワクしていました。
分かる人にはどのあたり出身かが1秒で分かってしまいますね。
さて、以前鉄道好きがなぜ鉄道を好きなのかを語る記事を出しました。まだご覧頂いてない方はどうぞ。
今回は鉄道で最も重要な部分である線路について取り上げてみたいと思います。
いつも通り結構癖が強い内容となっていますが、どうぞお付き合いください。
鉄道設備の最重要部分-線路
調理場をもたないレストランが存在しないように、線路をもたない鉄道会社は存在しません。
線路は鉄道輸送を営む会社にとってなくてはならないもの。
鉄道は日本語で文字通り「鉄の道」と書きますよね。鉄で作られた2本のレールの上を車輪を転がして走る交通機関が鉄道です。
その最も基本的なパーツとなるのが、出発地点から目的地までずーっと敷設された線路というわけです。
この線路ひとつ注目してみるだけでいくらでも語ることができてしまうくらい奥が深いのです。
線路の幅、進路の変え方、使われるレールの種類、敷き方まで、技術の進歩やその状況に応じた仕方でたくさんのバリエーションが存在しています。
軌間
電車を利用する時などに、ホームでじっと線路を眺める機会があるでしょうか?
もし幾つかの路線を乗り継ぐ機会があったとしたら、
「あれ、線路の幅がさっき使ったとこより広いなぁ」
なんて気づいたことなんてないでしょうか?
そう、実は鉄道の線路の幅って世界各地どころか日本だけでもいくつかのバリエーションがあるんですね。
ちなみに一般的にはレールの内側の幅を軌間(きかん)と呼びます。
日本国内で使用されている代表的な軌間の例は以下の通りです。
世界的に見ると日本では最高規格で設計されている新幹線で使用している軌間が標準とされていて、文字通り国際標準軌と呼ばれています。
日本国内ではこれより広い軌間の鉄道は存在しませんが、
世界にはシベリア鉄道などより軌間の長い広軌(こうき)を採用している鉄道も存在します。
日本の大部分の路線で採用されているのが、世界的には狭いとみなされている狭軌です。
よくよく考えてみると、軽自動車の幅にも満たない幅のレールの上を100km/h以上でぶっ飛ばしている日本て、結構クレイジーなんですよね(笑)。
それでも標準軌と狭軌それぞれメリットとデメリットがあり、日本ではわりとうまく使い分けられているのかなと思います。
ちなみに筆者は狭軌派で、JR線の広すぎず狭すぎない線路を見ると落ち着きます。
分岐器
分岐器は線路を別の方向に繋げて列車の行き先を変更する装置で、一般的にポイントとも呼ばれますね。
こちらも結構鉄道好きな人は好きなポイント(狙ってないです)で、芸能人やYouTuberでも熱く語る人が少なくありません。
少なくとも日本には車庫から営業用の線路が一本の線路のみで繋がる鉄道会社は存在しませんから、当然どの路線にも絶対に分岐器は存在しています。
何が魅力かといえば、やはりまずはその上を通過する列車のジョイント音なのではないかと思います。
僕も子供の頃は、姫路など大きな駅を発着する際に速度を抑えながらゴトゴトと転線する雰囲気が好きでした。
ゼロからのフル加速ももちろん好きですが、分岐器を徐行して走る様子はターミナル駅の余裕のある大物感みたいなのが感じられる瞬間でさらに好きですね。
何言ってんだか(笑)。
あと何といっても分岐器は動くということ。駅や踏切などの近くにある分岐器を眺めているだけでも結構面白いと思います。
列車が行き来する合間を縫って、グーっと曲がって左についたり右についたり。生き物みたいですね。
ちなみにこのような分岐器が一つの場所に大量に設置されている有名なスポットも存在します。
その一つが奈良県にある近鉄大和西大寺駅。気になる方はYouTubeなどでご覧になってみてください。
レールの種類
さて、一口にレールといってもこれまた幾つかの種類が存在するので、少し解説しておきたいと思います。
ちなみに専門用語ではレールのことを軌条(きじょう)とも呼びます。
重量
すべての路線が同じ規格のレールを使用しているわけではありません。
より重たい車両が高速で走る新幹線にはより重たいレールが、そうではない路線では費用対効果に応じてより軽量なレールが使用されています。
硬い地面を歩くのと、柔らかいマットの上を歩くの、どちらがバランスをとりながら歩きやすいかは容易に想像がつきますよね。
基本的に重たいレールほどどっしりと安定していて乗り心地も良くなる傾向にあります。
規格は1mあたりの重量で分類されていて、
日本の場合、新幹線用には60kgレールが、その他JRの在来線のほとんどの路線には50kgまたは40kgのレールが使用されています。
中には在来線でありながら60kgレールが使用されている、北越急行線も存在しているのが面白いポイントです。
断面形状
レールの形状はこれまで改良を重ねられてきました。
現在の日本および世界のスタンダードは底面が広くて安定性の高い平底レール。
以前は上面がすり減ったらひっくり返して引き続き使うことができる双頭レールというのも使われていました。
普段線路の断面を見る機会はあまりありませんが、踏切や駅の構造物の一部に使われていたりするので、案外身近なところで触れられるかもしれませんね。
レールの敷設方法
線路の良し悪しは使う設備だけに依存するのではなく、その敷き方ひとつで大きく変化します。
レールの繋ぎ方
まず乗り心地を大きく左右するのが、25mから50mほどあるレール同士をどのように繋ぐかということ。
基本的に鉄は温度によって多少伸縮するという特性があるので、わずかに隙間を開ける必要があります。
夏場はその隙間が埋まり、冬は逆に隙間が大きくなるので、列車がその上を通過する時に鳴る音が変化するわけですね。
しかしながら新幹線や大都市の幹線鉄道などに乗ると、驚くほど静かに滑らかに走ります。
これは技術の進歩によって線路の繋ぎ方が改良されてきたことによる恩恵が大きく関係しています。
有名な例がロングレールという技術。これは敷設時に現場で溶接することで継ぎ目のない長い一本のレールにしてしまう技術です。
定義上、この方法で200m以上の長さになっているものがロングレールと呼ばれるようです。
継ぎ目がないということは、大きなジョイント音が鳴らないと同時に、点検すべき箇所を減らすことで安全性の向上にも貢献します。
快適性と安全性、どちらにも影響する一石二鳥もしくはそれ以上の技術なんですね。
関西の新快速などが130km/hでも滑らかに走行できるのは、このロングレールのお陰というわけです。
他にもレールの繋ぎ方にはいくつかバリエーションがあるので、こういうの見てると飽きないんですよね(笑)。
レールの固定の仕方
さて、ロングレールはレールの隙間を埋める方法だったけど、それではレールが伸縮した時に逃げ場がないのでは?という疑問もでますね。
これを解決しているのが、レールを固定する技術です。こちらも向上しているお陰で、レールの伸縮を抑えて安全性を保つことができています。
レールを固定するための代表的なパーツが枕木、バラスト、そして締結装置です。
バラストとは、線路と枕木の下に敷く砂利のことですね。
枕木にはコンクリートと鉄筋を使用することで温度変化に対応させたり、バラストの質や敷き詰め方を工夫するなど、この辺りの技術も技術革新が進められてきました。
今ではそもそもバラストを必要としない構造をもつ線路も少なくありません。ちょうど上の画像はとある高架駅の線路です。
線路周りはデザイン性がなく一見地味に見えますが、日常の足を支えるこれら文字通りの土台は、一旦興味を持つと沼でしかありません。
縁の下の力持ち
鉄道設備の中で最も大きな部分を占めている線路。車両を置いておくだけにせよ走らせるにせよ鉄道会社には線路が必要です。
そんなどこにでも存在する線路にさえ、実にたくさんの技術が詰め込まれていると思うと興味深いと思いませんか?
ホームで線路を眺めるたびに、継ぎ目を一つ一つゴトンッと通過するたびに、
多くの人の手によってそれらが設置され維持されているということを思い出してみてください。
それではまた次の記事をお楽しみに!
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