【聞き取りの壁】”s”が聞こえない時があるのはなぜ?
日本人にとってスペイン語は比較的聞き取りやすく話しやすい言語のひとつであるといえます。
その理由の一つとして挙げられるのは、聞き取る音声と表記とのギャップが少ないということです。
たとえば対照的に日本人にとって発音の難易度が高いとされている英語を例としてみましょう。
“relative”という英単語をカタカナ表記するとします。「リレイティヴ」みたいな感じになるでしょうか。ローマ字読みして「レラティブ」としてしまうと、本来の発音からは大きく遠ざかってしまいます。
母音”e”と”a”の発音がローマ字のそれとは異なっておりイレギュラーな発音になっています。
ややこしく考えず暗記してしまえばいいこととはいえ、日本人にとってなじみのあるローマ字発音とは明らかに異なりますよね。
一方でスペイン語にはこのようなイレギュラーさは基本的にありません。”relativo”はそのまま「レラティーボ」という発音になるのです。簡単ですね。
ところが、そんなスペイン語でも聞き取りの際に気をつけておかないととても苦労するものがあるのです。
それが複数形の”s”の発音です。
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“s”が聞こえない
ほぼローマ字読みで対応できてしまうスペイン語ですが、”s”の扱い方について知っておかなければ、相手の話している言葉と自分のボキャブラリーに大きなギャップが生じてしまうことになります。
たとえ相手が自分の知っている言葉を話しているとしても、自分はそれをその言葉として認識することができないのです。
「バモ!」
例えば、映画の登場人物が「バモ、バモ」と言っているとします。
初心者の頭の中では「”vamo, vamo”もしくは”bamo, bamo”なのかな?」という予測が立ちますね。
しかしながらこれらはどちらもスペイン語には存在しない単語なので、その短いフレーズによって一瞬思考がストップしてしまいます。
「ガト」
また別の場面ですが、お金に関する会話をしているとします。
相手が「ガ(ッ)ト」という言葉を発したとします。聞く側はその発音により一瞬”gato(猫)”という単語を思い浮かべます。
しかしながら、お金の話をしている場面で突然「猫」が文脈に出てくるのは不自然です。
お金の話の中でも招き猫の話を出しているのなら納得することはできますが…。
答え合わせ
これら二つのケースに共通しているのは、聞いた音をもとに頭の中で”s”を補ってやる必要があるという点です。
前者の場合は、本来話している内容は”vamos”つまり「行こう」と言っています。語尾の”s”が欠落していたのです。
後者の場合は、間で聞こえなかった促音「ッ」の部分に”s”を補って”gasto”つまり「費用、支出」について言及しているのだと理解することができます。
このように、本来”s”の発音が予想される位置でそれが聞こえないというケースは少なくありません。
スペイン語における”s”の発音
どうしてこれらのように”s”の発音が聞こえないのかというと、それは私たち日本人の期待する発音とネイティブの発音の間にギャップがあるからに他なりません。
筆者は、そのギャップを作り出している要素が私たち日本人側とネイティブ側それぞれに存在すると考えています。
英語の”s”をスペイン語に期待してはいけない
まず一つ目の要素として、私たち日本人が非常に英語に親しんでいるという点が挙げられるでしょう。
おいおい、スペイン語の話と英語、関係ないやないか…とお思いかもしれませんが、少し思い返していただきたい。
英語の発音で”s”の発音が聞こえないケースってあるでしょうか?
例えば語尾につくべき複数形の”s”が全然聞こえない、なんてケースがあるでしょうか?
ほぼないでしょう。
つまり英語はスペイン語と異なり、表記上の“s”を非常に丁寧に発音する言語だということができます。
そして私たち日本人はスペイン語の発音にも当然のように同じ発音を期待しているために、聞こえない”s”に苦しんでしまうことが少なくないのです。
しかしながら、英語の発音とスペイン語の発音はそもそもまったく違うということなんですね。”s”もその一つだということです。
スペイン語の多様性によるもの
もう一つの要素はスペイン語の多様性つまり方言です。
実はスペイン語圏の中にも多種多様な発音や文法が各地方に存在しており、”s”の発音に関しても多様性が見られます。
“s”をしっかり発音する場所もあれば“j(ハ行)”のように発音する場所、はたまたまったく聞こえない、という場所もあります。
筆者の住むヤパカニはボリビアの二大都市ラパスとサンタクルスの中間に位置しているのですが、各地方の出身者が混在しているために発音も多種多様です。
このような場所では発音はもはや個人差の領域で、話し手が代われば発音も代わる、つまり聞く側もそのモードに切り替える必要があるというありさま。
なんとも外国人泣かせな田舎町です。笑
ボリビア一国だけでもこのような発音の違いがありますが、スペイン語圏は広く国の数も多いだけあってそのパターンは計り知れません。
スペイン語の勉強の際には、ぜひ”s”の発音の多様性にも注目しながら聞き取りに慣れていくことを強くお勧めします。
スペイン語独学の方、お手伝いします。
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